はじめての測定器選び Vol.1:オシロスコープ編|開発・修理で役立つ基礎知識と選定ポイント

はじめての測定器選び Vol.1:オシロスコープ編|開発・修理で役立つ基礎知識と選定ポイント

はじめに

大学の研究室や企業の開発部門で、機器の開発・修理・調整に携わる技術者の皆様。

「はじめてオシロスコープの選定担当になった」

「後輩に教えるために、改めて基本をおさらいしたい」

このようなシーンで、無数にある選択肢の中から最適な一台を選ぶのは簡単なことではありません。

この「はじめての測定器選び」シリーズでは、測定器のプロであるR4Rが、選定に役立つ基礎知識と実用的なポイントを分かりやすく解説します。第一弾のテーマは、電気・電子回路の基本測定器「オシロスコープ」です。

【その1】そもそもオシロスコープとは? - 役割の再確認

オシロスコープを一言で表すなら、それは「電子回路の目」です。

目に見えない電気信号の挙動(電圧の時間的な変化)を、波形として画面上に映し出すことで、私たちは回路が設計通りに動いているか、どこに問題があるのかを視覚的に把握できます。

  • 開発・設計:試作した回路の動作検証や性能評価
  • 修理・メンテナンス:故障した機器の不具合箇所の特定
  • 品質管理:製品が仕様通りの性能を出しているかの調整・検査

など、様々な場面でこの「目」は不可欠な役割を果たします。だからこそ、その「目」となるオシロスコープを正しく選ぶことが、技術者にとって極めて重要なのです。

【その2】オシロスコープ選びで失敗しないための最重要ポイント3選

多機能なオシロスコープですが、選定時にはまず以下の3つのポイントを押さえることが、最適な一台を見つけるための近道です。これらは、私たちR4Rがお客様から最もよくご質問をいただく項目でもあります。

ポイント1:周波数帯域 - 「観測したい信号を、いかに正確に捉えるか」

周波数帯域は、オシロスコープがどれだけ速い信号を正確に測定できるかを示す、最も重要な仕様です。この帯域が不足していると、観測したい信号の波形がなまってしまい、本来の形とは違う、誤った波形として表示されてしまいます。

【選び方の目安】

正確な波形を観測するためには、「観測したい信号の最も高い周波数成分の5倍以上」の周波数帯域を持つオシロスコープを選ぶのが一般的です。例えば、100MHzの信号を観測したいのであれば、500MHz以上の帯域を持つモデルが推奨されます。

ポイント2:チャネル数 - 「いくつの信号を、同時に比較・観測したいか」

チャネル数とは、同時にいくつの信号を入力し、画面に表示できるかを示す数です。市場には2チャネルや4チャネルのモデルが多く流通しています。

  • 2チャネル:回路の入力信号と出力信号を比較するなど、2つの信号の比較・観測で十分な場合に適しています。
  • 4チャネル:3相モーターの制御信号や、デジタル回路における複数信号のタイミング(ロジック)解析など、3つ以上の信号を同時に観測する必要がある場合に選択します。

現在の用途だけでなく、将来的に「もう少し多点の観測が必要になるかもしれない」といった拡張性も考慮に入れておくと、長く活用できる一台を選ぶことができます。

ポイント3:インターフェイス - 「計測したデータを、どう活用したいか」

観測した波形データをPCに保存してレポートを作成したり、自動計測システムに組み込んだりと、測定器をPCや他の機器と接続する際に重要になるのがインターフェイスです。

  • USB:手軽にPCと接続し、波形データや画面イメージを保存するのに便利です。
  • LAN(イーサネット):ネットワーク経由で、遠隔地からオシロスコープを操作したり、データを収集したりする際に利用します。
  • GP-IB:古くからある標準的なインターフェイスで、工場の自動検査ラインなどで使用されている既存システムとの連携で必要になる場合があります。

「取得したデータをどう活用したいか」を事前に明確にすることで、必要なインターフェイスが見えてきます。

【その3】賢い選択肢「中古オシロスコープ」という考え方

最新機種は非常に高性能ですが、その全ての機能が本当に必要でしょうか。また、価格も非常に高価です。

そこで有効なのが「中古オシロスコープ」という選択肢です。

中古であれば、コストを大幅に抑えつつ、必要な性能・仕様を十分に満たすモデルを見つけることが可能です。また、生産が終了してしまったモデルや、既存のシステムと連携するために特定のインターフェイス(例:GP-IB)を搭載した旧モデルを探す場合など、中古市場でしか見つからない価値ある一台に出会えることもあります。

【その4】最適な一台は「目的」から見つかる|R4Rのヒアリングと提案力

R4Rでは、「初心者におすすめのモデルです」といった画一的なご提案は、あえてしておりません。

なぜなら、技術者の皆様にとって最適な一台は、「何を、どのように測定したいのか」という目的によって全く異なるからです。

私たちR4Rが最も大切にしているのは、お客様との対話です。測定したい信号の種類、必要な性能・仕様、ご予算などを丁寧にお伺いした上で、長年の経験から培った中古市場の相場観や在庫状況を基に、お客様の目的に最も適したモデルをご提案します。

時には、ご要望のモデルだけでなく、より条件の良い類似モデルをご案内することも可能です。この迅速なヒアリングと、お客様一人ひとりの目的に寄り添った提案力こそが、私たちR4Rの強みです。

【まとめ】

オシロスコープ選びは、まず基本となる「周波数帯域」「チャネル数」「インターフェイス」という3つのポイントを理解し、その上でご自身の「測定目的」を明確にすることが成功の鍵です。

「自分の目的に合ったモデルがわからない」

「この予算で手に入るベストな機種を提案してほしい」

「探している旧式のモデルがある」

など、オシロスコープ選びで少しでも迷われたら、ぜひ一度R4Rにご相談ください。専門スタッフが、豊富な知識とネットワークで、皆様にとって最適な一台を見つけるお手伝いをいたします。

>> 測定したい仕様から相談する