光スペクトラムアナライザの選び方|波長範囲・分解能・用途別ポイント

「波長が合っているのにスペックが通らない」——OSA選びで見落としがちな3つの数値
光スペクトラムアナライザ(OSA:Optical Spectrum Analyzer)は、入力した光信号を波長または光周波数ごとのパワー分布として表示する計測器です。WDM信号の各チャンネル、レーザーの中心波長やSMSR、光増幅器のASEなどを評価できます。選定では、波長範囲だけでなく、波長分解能・波長確度・ダイナミックレンジ・レベル感度を測定対象に合わせて確認することが重要です。
光スペクトラムアナライザとは?何を測る装置か
OSAの画面は、一般に横軸が波長(nm)または光周波数、縦軸が光パワー(dBm)です。Anritsu MS9740Bでは、600〜1750nmの波長範囲をカバーし、中心波長、レベル、OSNR、スペクトラム幅などを解析できます。また、LD-Module、DFB-LD、FP-LD、LED、WDM、光アンプ、WDMフィルタ向けの測定メニューが用意されています(Anritsu公式サイトより)。
| 測定項目 | 何が分かるか | 主な用途 |
|---|---|---|
| 中心波長・ピーク波長 | 光源の発振波長 | LD・LED・光モジュール評価 |
| チャンネルパワー・OSNR | WDM各チャネルのレベルと雑音比 | WDM伝送・光アンプ評価 |
| SMSR | 主モードとサイドモードのレベル差 | DFBレーザーなどの評価 |
| スペクトル幅 | 光源の波長広がり | レーザー・LED特性評価 |
| ASEスペクトル | 光増幅器が生む自然放出光 | EDFAなどの評価 |
電気信号を扱うRFスペクトラムアナライザとは、入力する信号と評価する物理量が異なります。RF計測器側の周波数範囲・ダイナミックレンジ・位相雑音などの選び方は、「スペクトラムアナライザの選び方」で分けて解説しています。
選定で確認したい5つの仕様
1. 波長範囲
最初に、測定したい光源の波長をカバーしているか確認します。通信波長だけを扱うのか、850nm帯のVCSEL、可視光、さらに長波長側まで扱うのかで適したモデルが変わります。YOKOGAWA AQ6370Eは600〜1700nm、AQ6373Eは350〜1200nm、AQ6374Eは350〜1750nm、AQ6375Eは1000〜2500nmをカバーしており、用途ごとに波長帯が分かれています(YOKOGAWA公式サイトより)。
2. 波長分解能
近接したスペクトル成分をどこまで分離して表示できるかを見る仕様です。WDMの隣接チャネルやレーザーのサイドモードを分けて見たい場合に重要です。YOKOGAWA AQ6370Eは0.02nm、Anritsu MS9740Bは0.03〜1.0nmの設定分解能を備えます(各社公式サイトより)。
3. 波長確度
表示された波長が実際の波長にどれだけ近いかを示します。分解能とは別の指標で、WDMの波長管理や光源の絶対波長評価では重要です。AQ6370Eは±0.008nm typ.、MS9740Bは1520〜1620nm・所定分解能条件で±20pmという仕様例があります(YOKOGAWA・Anritsu公式サイトより)。
4. ダイナミックレンジとレベル感度
強いピークの近くにある弱い信号やノイズを見分けるには、ピーク近傍のダイナミックレンジが重要です。また、微弱なASEや低出力光源を測る場合はレベル感度も確認します。AQ6370Eでは近接ダイナミックレンジ78dB typ.、レベル範囲+20〜−90dBm、MS9740Bでは高ダイナミックレンジ70dB(ピーク±1nm、所定条件)などが公表されています(各社公式サイトより)。
5. 対応ファイバ・コネクタ・測定速度
シングルモードだけでなくマルチモードを扱うか、FC・SCなど必要なコネクタに対応するか、量産検査で掃引時間を短縮したいかも実運用に直結します。MS9740BはSMファイバと50/125μm GIファイバに対応し、ユーザー交換可能なFC・SC・ST・DINコネクタを選択できます(Anritsu公式サイトより)。
用途別の選び方|WDM・レーザー・研究・保守
| 用途 | 優先したい仕様 | 代表的な機種例 |
|---|---|---|
| WDM伝送システム評価 | C/L帯を含む波長範囲、細かい分解能、近接ダイナミックレンジ、OSNR解析 | YOKOGAWA AQ6370E、Anritsu MS9740B |
| レーザーダイオード評価 | 波長確度、分解能、SMSR解析、レベル感度 | Anritsu MS9740B |
| 研究開発・広波長評価 | 測定対象を覆う波長範囲、対応ファイバ、解析機能 | YOKOGAWA AQ6373E/AQ6374E/AQ6375E |
| 現場保守・局内チェック | 必要十分な波長範囲、測定速度、操作性、保存・通信、設置性 | 測定内容と運用条件から選定 |
WDM伝送システムの評価・保守
WDMでは、対象となるC/L帯を含む波長範囲に加え、隣接チャネルを分離できる波長分解能、強いチャネル近傍の弱い成分を見分けるダイナミックレンジ、OSNR解析機能を確認します。YOKOGAWA AQ6370Eは600〜1700nm、0.02nm分解能、78dB typ.の近接ダイナミックレンジを持ち、Anritsu MS9740BもWDM・光アンプ・WDMフィルタ向け測定メニューを備えています。
レーザーダイオード・モジュールの特性評価
中心波長、スペクトル幅、SMSRなどを測る場合は、波長確度と分解能、主モード近傍を正しく分離するダイナミックレンジを重視します。MS9740BにはDFB-LD、FP-LD、LEDなどの解析メニューがあり、製造・評価用途を想定した機能が用意されています(Anritsu公式サイトより)。
研究開発で可視光〜長波長まで扱う
研究用途では「高性能な1台」より、まず測定したい波長帯が入るかを確認します。YOKOGAWA AQ6373Eは350〜1200nm、AQ6374Eは350〜1750nm、AQ6375Eは1000〜2500nmと、対象波長に応じてシリーズが分かれています。可視光、通信用光源、長波長レーザーでは必要な機種が異なります。
現場保守・局内チェック
現場では最高性能より、必要な波長帯を短時間で確認できること、データ保存・転送、操作性、設置性が重要になります。ベンチトップOSAを持ち込むのか、別のフィールド向け光計測器で代替できるのかも含め、「何を判定したいか」から逆算すると過剰な仕様を避けやすくなります。
中古機では、カタログスペックだけでなく波長確度の校正状態、光コネクタ、対応ファイバ、必要な解析オプション、PC・リモート制御環境も確認してください。同じシリーズでもオプションや世代で対応内容が異なるため、実機構成との照合が重要です。
よくある質問
Q. 波長分解能は小さいほど良いですか?
A. 細かいピークを分離するには小さい値が有利ですが、必要以上に高分解能へすると測定時間や価格とのバランスが悪くなる場合があります。WDMのチャンネル間隔、レーザーの線幅、SMSRなど、分離したい対象から必要値を決めます。
Q. 波長分解能と波長確度は同じ意味ですか?
A. 異なります。波長分解能は近接した2つのスペクトルを分けて見られる能力、波長確度は表示された波長が実際の値にどれだけ近いかを示す仕様です。WDMのグリッド管理などでは両方を確認します。
Q. 光スペクトラムアナライザとRFスペクトラムアナライザは何が違いますか?
A. 光スペクトラムアナライザは光信号を波長または光周波数ごとのパワー分布として測ります。RFスペクトラムアナライザは電気信号の周波数成分を測る装置です。RF計測器側の選び方は「スペクトラムアナライザの選び方」で解説しています。
Q. 中古の光スペクトラムアナライザで確認したい点は?
A. 必要な波長範囲・分解能・ダイナミックレンジに加え、波長確度の校正状態、光コネクタ、対応ファイバ、必要な解析機能、付属品を確認します。旧型機では通信インターフェースやPCソフトの対応環境も確認します。
まとめ
光スペクトラムアナライザは、光信号を波長ごとのパワー分布として測る装置です。選定では、まず測定したい波長帯を決め、そのうえで分解能・波長確度・ダイナミックレンジ・レベル感度をWDM、レーザー、研究開発、保守といった用途から逆算して確認します。中古品では校正状態や光コネクタ、ファイバ、解析機能まで含めて実機構成を確認すると、必要な測定を満たす機種を選びやすくなります。


