ネットワークアナライザの選び方|周波数範囲・ポート数・ダイナミックレンジ・校正の確認ポイント

測定対象と校正方法から逆算して、必要な仕様を絞り込む

ネットワークアナライザ(ここでは、反射と伝送を振幅・位相で測るベクトルネットワークアナライザ)は、フィルタ・増幅器・ケーブル・アンテナなどの高周波特性を、周波数ごとに測定する機器です。選ぶときは、測定対象の周波数範囲、必要なポート数、ダイナミックレンジと測定速度、コネクタと校正方法の順に確認します。中古では、これに加えて校正状態とテストポートの状態を見ておくと失敗しにくくなります。

ネットワークアナライザは何を測る機器か

ネットワークアナライザは、測定対象(DUT)に信号を入力し、反射してくる成分と通り抜ける成分を周波数ごとに測る機器です。結果はSパラメータで表されます。2ポートの場合、S11(入力側の反射)、S21(順方向の伝送)、S12(逆方向の伝送)、S22(出力側の反射)の4つです。

これらから、リターンロスやVSWR、挿入損失やゲイン、位相、群遅延などを求めます。フィルタの通過特性、増幅器のゲイン、ケーブルやアンテナの整合状態の確認などに使われます。

スペクトラムアナライザとの違いは、既存コラムのスペアナとネットワークアナライザの違いで整理しています。

名称の混同にご注意ください。同じ「ネットワークアナライザ」の名前でも、通信のパケットや回線品質を測るIPネットワーク向けの機器は別の種類です。本記事は、高周波の反射・伝送特性を測るベクトルネットワークアナライザを対象にしています。

選び方:5つの確認項目

1. 周波数範囲:使う帯域に加え、見たい帯域外の特性も考える

測定したい周波数帯を含むことが前提です。そのうえで、フィルタの阻止帯域や増幅器の高調波のように、使用帯域の外側も確認したいか整理します。必要な上限周波数は、測定の目的によって変わるため、一律に「使用周波数の何倍」とは決められません。

下限周波数も確認します。低い周波数から測れる機種は、電源まわりや低周波に近い素子の評価にも使えます。

2. ポート数:2ポートで足りるか、それ以上が必要か

フィルタ、増幅器、ケーブルのような2端子対の素子は、2ポートで測定できます。方向性結合器のような3端子の素子や、複数の入出力を持つ部品、平衡(差動)の素子を評価する場合は、より多いポート数の構成が必要になることがあります。

ポート数は、本体の仕様に加え、オプションや外部の切替機器で拡張できる場合があります。必要な構成を、型番とオプションの両面で確認してください。

3. ダイナミックレンジと測定速度:トレードオフで考える

阻止帯域の深い減衰や、入出力間のアイソレーションのように、小さな信号を測る場合は、ダイナミックレンジが重要です。IF帯域幅を狭くするとノイズが減って小さな信号を測りやすくなりますが、測定時間は長くなります。

生産ラインのように測定回数が多い用途では、測定速度を重視します。測定点数とIF帯域幅の設定を含めて、必要な速度を満たすかを確認してください。

4. 出力パワーと入力保護:測定対象を壊さない

増幅器のように入力できる電力が限られる素子では、出力パワーを下げて測定します。圧縮特性を確認するパワースイープを使う場合は、出力パワーの設定範囲も確認します。測定対象の最大入力と、機器の出力・入力の条件を、事前に照合してください。

5. コネクタ形式と校正方法:測定の確かさを決める

テストポートのコネクタ形式は、使う周波数帯と、測定対象や測定ケーブルの接続に関わります。一般に、高い周波数ほど、小型で高精度なコネクタが使われます。

校正は、機械式の校正キットを使う方法と、電子校正器を使う方法があります。電子校正器は接続回数が少なく、作業の手間を減らせます。校正キットは、コネクタの形式(オス・メス)と周波数範囲が、使う機器に適合している必要があります。

測定対象別に重視する項目

何を測るかによって、優先する項目は変わります。次の表は、考え方の目安です。

測定対象主な測定項目重視する項目
フィルタ通過特性、阻止帯域の減衰、群遅延ダイナミックレンジ、周波数範囲(帯域外を含む)、2ポート
増幅器ゲイン、アイソレーション、圧縮特性出力パワーの設定範囲、入力保護、パワースイープ機能
ケーブル・コネクタリターンロス、挿入損失コネクタ形式、校正キットの適合、測定速度
アンテナリターンロス、VSWR周波数範囲、現場で使う場合はポータブル型も候補
多ポートの部品ポート間の伝送・アイソレーションポート数の構成、切替機器の要否

ミキサのように周波数を変換する素子の測定には、対応する機能やオプションが必要な場合があります。型番だけで判断せず、機能の有無を確認してください。

中古で確認したいこと

中古品の相談では、次の点を確認すると、導入後のずれを減らせます。

  • 校正の状態:最後の校正日と、校正証明書の有無。使用前の校正(ユーザー校正)と、機器自体の校正は別のものです。校正の選び方は、使用目的に合わせた中古測定器の校正の選び方で整理しています。
  • テストポートの状態:コネクタの摩耗や破損は、特に高い周波数で測定結果に影響します。
  • オプション構成:周波数拡張、ポート数、時間領域測定など、必要な機能が搭載されているかを確認します。
  • 付属品:校正キット、測定ケーブル、電子校正器などは、付属しない場合があります。
  • サポート状況:機種によっては、メーカーの修理や校正のサポートが終了していることがあります。導入前に確認が必要です。

中古計測器全般の確認項目は、中古計測器の選び方・買い方 完全ガイドもご覧ください。

掲載機種の見分け方と相談時に伝える条件

R4Rのネットワークアナライザのカテゴリには、Keysight、Rohde & Schwarz、Anritsuの機種を掲載しています。仕様は、各ページとメーカー公式資料でご確認ください。例として、次のような機種があります。

見積もりのご相談では、次の条件をお知らせいただくと、必要な構成を確認しやすくなります。型番が未定でも構いません。

  • 測定対象:フィルタ、増幅器、ケーブル、アンテナなど
  • 周波数範囲と、必要なポート数
  • テストポートのコネクタ形式
  • 校正キットや測定ケーブルの要否、校正証明書の要否
  • 必要台数、希望納期、予算

よくある質問

Q. スカラ型とベクトル型の違いは何ですか?

A. スカラ型は振幅だけを測り、ベクトル型は振幅と位相の両方を測ります。反射の位相や群遅延、Sパラメータ全体が必要な場合は、ベクトル型を選びます。

Q. スペクトラムアナライザでは代用できませんか?

A. トラッキングジェネレータを備えた機種なら、伝送特性の振幅は測れます。ただし、位相や、反射を含むSパラメータ全体が必要な場合は、ネットワークアナライザが適しています。

Q. 校正は、どのくらいの頻度で必要ですか?

A. 一概には決められません。測定前に行うユーザー校正は、測定ケーブルを動かしたり、設定や環境が変わったりした場合に、やり直すのが基本です。機器自体の定期校正は、使用目的や社内の管理ルールに合わせて決めます。

Q. 型番が決まっていなくても、中古品を相談できますか?

A. 測定対象、周波数範囲、ポート数、コネクタ形式、希望納期をお知らせください。必要な仕様から候補と構成を確認します。掲載にない型番は、在庫探索・調達支援でもご相談いただけます。

まとめ

ネットワークアナライザは、測定対象の周波数範囲とポート数から候補を絞り、ダイナミックレンジ・測定速度・コネクタ・校正方法を合わせて選びます。中古では、校正の状態、テストポートの状態、オプション構成、付属品、サポート状況を確認してください。型番が未定なら、測定条件の整理から相談できます。

掲載されていない型番や、既存設備と同じ機種が必要な場合は、型番・用途を伝えて在庫探索・調達を相談することもできます。

本記事は、一般的な測定原理にもとづく解説です。個別機種の仕様は、各製品ページおよびメーカー公式資料でご確認ください。

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